塾は居場所になりうるのか


その1 ギン塾長の存在

学校でまったく友達と話さないという子が塾で元気だという話を聞くことがある。

学校は嫌いだけれど塾が落ち着くといって毎日、塾がない日でも来て、自習をしている子

がいる。

ある子が話しているのを聞いた。「この塾はゆるいな。ほかの塾はもっと厳しいよ。」

「じゃあ、もっと厳しくしてほしいと言う事?」と聞くと、いや、そうじゃないけれどね。と言葉を濁す。確かにこの塾にはほかにないものがある。そのひとつはギン塾長の存在。年齢は15歳の老犬だ。塾が始まると、玄関から外を見ている。誰も頼んではいないけれど、自分の仕事だと思っているのか、玄関マットの上に乗って生徒が来るのを見ている。そのおかげで家の前を通る人が自転車を止めて声をかけていくことも多い。近くの保育園の子供たちまで、毎日ギンに会うのを楽しみにしている。塾の子供たち以外にも結構知れ渡っている。塾の子供たちはギンと遊ぶのをみに楽しみにしている子がいる反面、まったく無視している子もいる。それでもギンはきちんと「こんにちワン」とやさしく声をかける。

先日、卒業してもうずいぶん経っている卒業生が今度ギンに会いに行きたいと言ってきた。

中学生のころは無視していた子だったが、ギンのことを急におもいだしたのだそうだ。

中学時代の記憶の中にギンを見出したのかもしれない。

そう思うとギンは貴重な存在なのだろう。この塾はやはりゆるい塾なのだろうか。

ギンはけっこう人気がある。